ハレオビ・ストーリー

ハレオビは本年1月13日に登録商標となりました。

そこで改めてハレオビについて、少し振り返っておきます。

少々長文ですが、お付き合いください。

 

「おにぎりはもうやらない」

以前、私は弁当やおにぎりを製造販売していた食品会社さんに「しゃけ」や「うめぼし」などのおにぎりに貼るシールを納めていました。「最近、納品が減ってきたな、、」と思っていた矢先、取引先の社長に、これからは宅配弁当にシフトするので「おにぎりはもうやらないから、お宅との付き合いも少なくなってしまうなぁ」と言われたのです。

おにぎりは、ご存じのようにコンビニの売れ筋商品で、競争が大変激しい商品です。利益の出にくいおにぎりより、これからは単価の高いお弁当をネットで販売してくれるサイトに登録して売る。これが結構売れるのだと。元々は都内で仕出し店を数店舗を構えていた腕がある社長。味は確かです。

工場には、黒い折箱がそこかしこに積まれて、これまでの姿とは様変わりしていました。

小さな3段の容器。ここに和牛のすき焼きなどの和惣菜を詰めて重箱弁当にしているのです。3段の黒い容器が、店名入りの帯掛け紙を掛けた上に、山吹色の太い化粧ゴムで留められて、なかなかの高級感です。

「でも、結構作業が大変なんだよね」そんな声が聞こえました。作業の工程を見せてもらうと、弁当箱に料理を詰めるのはお手のものなのですが、3段の弁当箱をズレないようにする仕上げの包装で、慣れない作業に戸惑う姿が見られました。

 

「これをシールにできないか、、」

そのとき、「これをシールにできないか、、」そう閃いたのです。

アイデアを口にすると、取引先の社長も、これまでの付き合いもあるから検討するよとのことでした。2018年の春、試作に明け暮れる日々が始まりました。

シールには百種類を超える紙と糊の組み合わせがあります。大きくは原料に木材パルプを使用した紙系と、石油由来のフィルム系に分かれ、糊は、永久接着の一般糊、さらにあらゆる条件で剥がれにくい粘着の強い糊があります。近年では、糊付き付箋に代表される再剥離と言われる、糊残りせずにきれいに剥がれる糊も一般的になりました。市場の求めに応える形で、シールは進化を続け、バリエーションを増やしてきたのです。

そのためか使い方が限定的で、冷凍食品にはフィルムに冷凍糊、個人情報保護シールには紙に再剥離糊など、お決まりの十八番のような組み合わせがありました。ただ、今回のような正解のないシールには、実際にテストをするしかありません。

まず、一般糊のシールを試しました。1枚のシールでしっかりと保持するのですが、きれいに剥がすことができません。ビリビリに破れてしまいます。そこで再剥離の糊を試してもらいました。そうすると剥がしても本体もシールも破けることがありません。ただ、お弁当の重さに粘着が耐えられず、脱落してしまう可能性がありました。

再剥離のシールも糊の強さに種類があります。容器の素材によっても相性があります。その見極めが重要です。

その容器には、再剥離のシールで良好な結果を得ました。デザインを化粧ゴムを掛けたように横断する線を足して、見た目にあまり差がないようにしました。コスト面でも、当時使っていた掛け紙、化粧ゴムと合わせてもコストダウンでき、作業時間も半分に減らすことができました。

 

「この掛け紙シールを紹介してほしい」

実際に貼ってみると、思ったよりも剥がすのが大変。

剥がししろができないかとの要望がありましたが、一部に糊のない場所を作るのはコストアップにつながる。

それならと、シールを台紙から剥がす際につける裏スリットを端につけて、剥離紙をそのまま着けておき、剥がししろにしてもらうように改善しました。(実際には気づかずに真ん中から破ってしまう方が多いようです)

数多くのテストを経ていよいよ、本番で使ってもらうことになりました。その後も、気づかなかった問題や失敗もありましたが、お客さんと一緒に考えて、改良を繰り返していきました。

時代の要請か、夜の宴会よりもランチミーティングや会議弁当が増えていた時期でもあり、この会社のお弁当はみるみる売上を伸ばし、宅配サイトの高級弁当のランキングで1位となりました。毎日数百個のお弁当の注文が入り、掛け紙シールも順調に売上を伸ばしていきました。

そんな時に宅配サイト側から「この掛け紙シールを紹介してほしい」というお声がかかり、営業時間外に店舗でお弁当を作りたいという飲食店さんに、ご紹介に回りました。

コスト面で合わなかったり、容器との相性が悪かったりで、採用されないことも多かったですが、一度使っていただいたお客様は、必ずリピートをくださいました。

もしかしたら、この掛け紙シールは自分が思っている以上に、便利なのかもしれない、、、そう感じました。

 

「それなら、もっと自分で紹介していけないか」

そう思っていた矢先、コロナが全世界を、そして飲食業界を襲ったのです。

飲食店でのマスクなしの会食がコロナの流行を助長しているとの、国の発表やマスコミの報道があり、実質、飲食店での会食を自粛するよう求めました。先の食品会社も、イベントの中止やテレワークによる社内の会食需要の激減で、大きく売上を落としました。先の見えないトンネルに入った時期でした。

ところが店舗での提供ができないことで、多くの飲食店さんは宅配・テイクアウトに活路を見出しました。自治体の支援や、業態転換の補助金を得て、飲食店さんはお弁当に積極的に取り組むようになりました。逆風が一転、追い風になったのです。

私は、コロナに翻弄されながら外出を控えた時期、ホームページの内製化をはかりました。既に実績のある掛け紙シールです。便利さを知ってもらうことが重要です。そんな思いを込めてブログを書き始めました。同時に「非対面営業による弁当事業参入者向け「掛け紙シール」販路開拓」という企画を、国の持続化補助金に申請をいたしました。

お弁当事業に参入する飲食店に、掛け紙シールを小ロットかつ非対面で販売するために、小ロット生産の設備、ランディングページの作成、ダイレクトメールでの告知など、私の思いを込めて企画書を練りに練りました。

募集期間中、一番採択率の低い回でしたが、そんな中で企画が採択されたことは、この事業への自信にもつながりました。申請も採択数も多かっただけに、認定は大幅に遅れましたが、ようやく実施に取り掛かることができました。

ランディングページはネットのブログを読んで注目していた、池袋のデザイン会社さんに依頼。同じ地域でもあって、快くお引き受けいただき、デザインのお打ち合わせで、私の思いの丈をお伝えしました。それなら、このサービスにブランド名をつけた方が良いとのことで、そのコンセプトを考えました。当初は、祝いの席に名入れの掛け紙として使ってもらうことを想定していたのです。

「お祝いやハレの日に取り寄せるお弁当に、名前の入った帯のシールが貼ってあったら素敵だろうな、、、」と。

 

そして20216月、「ハレオビ」は始動しました。

とてもニッチな商売です。でもここまでくるのにはそれなりの物語がありました。

こうして始まった1枚のハレオビから始まるストーリー。これからも皆さんと紡いでいきたいと思っています。

「ハレオビ」の詳細については以下のホームページを参照。

シールでできた新しい掛け紙「ハレオビ」

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